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Somewhere in time

A little something to say in my everyday life

童謡詩人、金子みすゞ

書籍(詩)
童謡詩人金子みすゞの生涯

童謡詩人金子みすゞの生涯

 

この本は、金子みすゞ記念館館長の矢崎節夫氏が書いたもの。 矢崎氏が金子みすゞの詩「大漁」に初めて出会ったのは大学1年の時。 それ以来、金子みすゞという童謡詩人についての情報や彼女の作品を探し続けるという「みすゞ捜しの旅」が始まったという。

金子みすゞは1903(明治36)年4月11日生まれ-1930(昭和5)年3月10日死去と、27歳にも満たない短い生涯だった。 結婚後は結婚相手から詩作を禁じられたこともあり、世に出た作品は少なかった。

金子みすゞにつながる手がかりになかなか出会うことができなかった矢崎氏が、みすゞの弟(上山雅輔氏 / 本名:上山正祐)に出会うことができたのは、「みすゞ捜しの旅」を始めてから16年目のことだったという。 この長い時間を見ても、本当にずっと探し続けていたことがわかる。 弟である上山雅輔氏との出会いから、ことは少しずつ動きだし、この本に収められているように、みすゞを知る人たちに会い、みすゞに関する話しを聞くことが できた。 また、上山雅輔氏からみすゞの作品や写真、上山雅輔氏自身の日記を借りることができ、他の人たちからもみすゞの写真などを見せてもらうことができ、みすゞ の生涯をまとめることができた。

それにしても、金子みすゞの作品を読めば読むほど、「なぜあんなに短い人生を選んだのか」と思わざるをえない。 もちろん「なぜ」などと言ったところで、今となっては何も変わりはしないのだが。

幼い頃に父親を亡くしたとはいえ、優しく賢い祖母、母親、兄、そして村の人たちに囲まれ、心のきれいな優しい子に育ち、学校での成績も良かったた め、女学校も卒業し、投稿した童謡詩も採用されるなど、自分のやりたい事をやり、幸せな少女から幸せな女性へと成長するはずだったのに。 人生とは、こんなものだろうか。 母親の再婚相手に強制的ともとれるような結婚をさせられたのだが、結婚した相手はとるところの無いような男で、金が入れば遊郭や女遊びばかり。 挙句に作詩もさせず、みすゞは夫から淋病をうつされてしまう。 そんな中、ただ一つの救いは娘を産んだこと。 それも、最終的には離婚することになり、結婚相手が意地でも娘は自分が引き取ると言い張り、みすゞに対する嫌がらせが続く。 結婚した頃から、人生の歯車が悪い方へ悪い方へと転がっていったかのように。 そして、最後は自殺。

今の世の中であれば、きっとここまで悲劇的な最後を遂げずとも済んだのではないかと思ってしまう。 昔の男尊女卑の社会。 女性は何も発言権がない時代。 結婚にしても、周りの人たちが決めてしまう時代。 みすゞは夫となる人の女性関係について薄々知っていたというか感じていた。 今なら、「結婚しない」と言えるものを、みすゞは再婚である母の立場、弟のことなどを考え、したくもない結婚をする。 離婚にしても、母親の再婚相手もみすゞの夫の行動に怒り心頭にたっし、別れさせようとしたが、その時みすゞは既に妊娠していた。 だから別れなかった。 今なら、例え子供が生まれた時父親がいなくても、人間以下、畜生みたいな男が父親であるよりはいいのではと離婚するだろうに。 そして、親権の問題。 夫の嫌がらせのような行動も今ならストカー扱いで警察沙汰である。 この本の中で、みすゞの結婚後から服毒自殺をするまでの辺りを読んでいると、腹が立って腹が立ってどうしょうもなかった。 そういう時代だったと言ってしまえばそれまでなのだろうか。

最後に、疑問を感じたこと。 それは、「大漁」という詩にも滲み出ているように、みすゞの詩には命の大切さや生きとし生けるものの命は皆同じといった思いが込められていると感じられるのに、自ら選んだ答えは自殺…。 自分の命を自ら絶つということは、極端に言ってしまえば、命を粗末にすることにつながるのではないだろうか。 娘のため? 親、兄弟のため? 夫に対する最後の抗議、抵抗? 常に周りの人たちのことを思い、他の人のことを悪く言うこともなく、清水のように清らかな心を持った童謡詩人。 こういう人だからこそ、読んだ人の心に響く詩が書けた。 そして、それと同時に自らの心と体はぼろぼろだったのかもしれない。

金子みすゞ記念館 - 長門市ホームページ

ところで、金子みすゞの作品に関しては著作権の問題がある。 みすゞの死から50年以上はたっているわけだが、青空文庫にも収められていないことに気が付いている人も多いと思う。 この問題に関しては、以下のサイトが詳しく書いている。

blogs.yahoo.co.jp

大漁

朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ

浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。
-「童話」大13・3